2014-04-13

個人Macで利用するAPC「GS Pro 500」

今回はシュナイダーエレクトリック社の無停電電源装置「GS Pro 500」を導入してみた。製品の型番は「BG500-JP」である。

シュナイダーエレクトリック社の無停電電源装置、と言うより「APCのUPS」と表現した方が通りが良いに違いない。かつてのエーピーシー・ジャパン社はシュナイダーエレクトリックの社名を引き継いだわけだが『APC』のブランド名は使われ続けている。
この製品を購入するきっかけはネットを徘徊していて偶然この製品を見掛けたことで、バッテリーの寿命が来たまま放置していたAPCのUPSを新しいモデルに買い替えることにした。同社の製品としては新世代とも言えるリチウムイオン蓄電池を採用したモデルで、従来の鉛蓄電池を使用するモデルに比べて軽量でスリムなボディとなっている。重量が2.2kg、高さ29cm、奥行き19.1cm、幅5.4cmとなっており、基本は付属の台座(スタビライザー)か壁掛けによる縦置きが想定されているようだ。一方で、家庭用テレビレコーダー等と一緒にラックへ横置きで収納しても違和感が無いようになっており、前面のLEDインディケーターの意味を示すプリントは文字を排してアイコンだけが用いられている。
出力は最大300W(500VA)となっており、最大負荷では約3.5分、200Wで約6分、100Wで約12分、50Wで約23分といったランタイムがカタログ値である。目的としては、少なくともMac mini本体とバックアップ用の外付けHDDは無停電化したく、できればLED Cinema Displayも含めたいので、容量としてはもうワンランク上を狙いたいところだが、現時点ではリチウムイオン電池のモデルは唯一このタイプしかないので妥協することにした。実際に上記の3種を接続した状態でUPSの消費電力情報を参照してみると、アイドリングの状態で50Wを下回るレベルであったため、多少ディスクアクセスが発生しても100W程度には収まりそうだ。これなら充分シャットダウンのための時間は稼げると見込んでいる。

パッケージは、段ボール箱の中に本体、バッテリー、それと付属品やマニュアル類がひとまとめになったビニール袋が入っている。UPS自体に給電する電源ケーブルは本体から直出しなので、付属品としてはEthernetケーブル、電話ケーブル、USBケーブルの3種とユーティリティ収録CD、他に導入ガイドと壁掛け時のネジ穴位置決め用型紙、それと保証書が入っている。ちなみに、付属品のビニール袋にはシリアル番号が記載されているがこれは本体とは無関係らしく、保証用に製品登録をする際のシリアル番号は本体又は外箱の側面に記載されているものを使用する必要がある。なお、導入ガイドには初期のバッテリー装着や本体設置の説明だけが記載されており、各種の設定や運用方法の説明は別途「操作マニュアル」として付属のCDに収められている。これらのドキュメント類は、添付されているものも含めてメーカーのWebサイトからダウンロードできるようになっている。

まずは、底面のツメを押してバッテリースロットのフタを取り外す。入口にあるバッテリー引出し用のタブを手前に起こした状態で、奥のコネクタの方向を合わせてバッテリーを押し込むと、かっちりとはまる感じで収まる。タブを自然に戻したら、元通りフタを取り付ける。さらに、タワー型で使う場合は、付属のスタビライザーを前後方向に注意して底の凹みにぐっと押し込んで取り付ける。
付属の電話ケーブル、USBケーブル、Ethernetケーブルを各々背面のポートに接続する。電話ケーブル用のポートは左右に並んで位置しており、背面から向かって右が「In」、左が「Out」となっているので、(説明書には何も記述がないが)公衆回線側のケーブルを右に接続するのが妥当なのだろう。この製品は、他の電源コンセントがすべて水平に後方へ出ているのに対して、上記3種のポートは下方に向かって傾斜して設けられているので、ケーブルの後方への飛び出し幅が小さくなる。どちらかというと、電源ケーブルの方が径が太くて取り回しでは苦労するのだが、なぜか通信ケーブルの取り回しの方を優先しているようだ。
AC電源供給用のコンセントは4個装備されている。説明の都合のために、ここでは上部から順にNo.1、No.2、No.3、No.4の番号を用いることにする。
No.1のコンセントはマスタコンセントと呼ばれ、ここに接続された機器の電源がオンになって電力が供給されると、連動してNo.3とNo.4のコンセントへ電力供給が開始される。また、No.1の機器が電源オフとなり供給が停止すると、No.3とNo.4も停止する。一方、No.2のコンセントは他のコンセントとの相関関係は無い。
これらのコンセントのうち、No.1とNo.2は設定に関わらず停電時にバッテリーから給電されるが、No.3とNo.4は停電時の給電対象とするか否かを各々独立して設定することができる。
したがって、パソコンと周辺機器を接続する場合は、パソコン本体をNo.1に、パソコンとは電源連動しないがバッテリーを利用する機器(例:ルーター)をNo.2に、電源連動してバッテリーも利用する機器(例:外付けHDD)をNo.3に、電源連動はするがバッテリーは利用しない機器(例:プリンタ)をNo.4に、といった構成が想定できる。この場合に、Webインタフェースを利用した設定でNo.3はバックアップ対象、No.4はバックアップ対象外という指定にすることになる。言うまでもないがNo.3とNo.4の使い方は逆でも構わないし、No.3もNo.4と同じ指定(バックアッップ対象外)にして、外付けのアクティブスピーカーを接続するといった使い方も考えられる。
まずは、Mac miniをNo.1、外付けHDDをNo.3、LED Cinema DisplayをNo.4に接続してみる。今のところプリンタはネットワーク接続型を利用しており、電源連動の必要がないのでUPSへは接続しない。他に、電源連動は不要だができればバックアップ対象としたいNASや、電源連動はした方が良いがバックアップ対象外で良いDAC内蔵アンプといった機器もあるが、これらは取りあえず従来通りの通常給電として初期セットアップを始めることにした。

各コンセントの使い分けをまとめると次のようになる。
No.1:他の機器に対する連動の元→パソコン
No.2:他の機器と連動しない→モデム、スイッチ、ルーター、ハブ
No.3or4(バックアップありを指定):No.1に電源連動で停電後も稼働→外付けストレージ
No.3or4(バックアップなしを指定):No.1に電源連動で停電後は即停止→プリンタ、DAC、アンプ、アクティブスピーカー等
なお、停電後にパソコンは操作せずにUSBケーブルを経由した指示により安全に電源断するだけの場合はディスプレイのバックアップの必要は無いが、ぎりぎりまで操作を継続したい場合はバックアップをする指定にもできる。ただし、当然ディスプレイはかなり電力を消費するのでバックアップの持続時間は短くなるので注意が必要である。

通信ケーブルとしては、USBケーブルをMac mini本体背面のポートに直結し、Ethernetケーブルをブロードバンドルーターに接続し、電話ケーブルは壁のモジュラーコンセントに接続する。UPS本体の残りの電話ポートには固定電話のモジュラーケーブルを接続する(今時、普通の固定電話を置いているのも珍しいとは思うが)。もちろん電話は単なるサージプロテクトだけの機能なので、接続は必須ではない。
最後に、UPSから直出しになっている電源ケーブルをACコンセントに接続する。
この時点で、内部のNTC回路は通電して動作を開始するので、本体前面のEthenetのアクティビティを示すLEDが点滅を始めるが、何も気にする必要は無い。
続いて上端の電源ボタンを押すと、電源が入るとともにセルフテストが開始されてLEDが点滅する。テストは短時間で完了してLEDは点灯に変化するので、バッテリーの充電が始まるとともに利用が可能となる。バッテリーのフル充電には約12時間を要するようだが、入手した付属バッテリーは凡そ8割程度は残量があったようだ。

各装置の電源スイッチをオンにして、最後にMac本体の電源を入れる。普通に起動してシステム環境設定から省エネルギーを選ぶと自動的に「UPS」のタブが出現する。ここで、メニューバーにUPSステータスを表示する設定にチェックを入れれば、メニューバーにアイコンが表示される。アイコンからメニューを使って、バッテリー残率を併記させることもできる。
次に、ルーターによるDHCPサーバーからのIPアドレス払出し情報を参照して、UPSに割り当てられたアドレスを確認する。アドレスは、ホスト名「opcxxxxxx」(xxxxxxはアドレスの末尾)やMACアドレスを基に探せば良い。MACアドレスはUPS本体にも記載されている。

IPアドレスが判ったら、Webブラウザにアドレスを入力すればログイン用の画面が表示される。初期のユーザー名とパスワードを入力したら、ホーム画面が表示される。ここで注意しなければならないのは、デフォルトでのログインセッション時間が3分間に設定されていることである。この時間は設定で変更が可能だが、初期状態では画面に入力をしている間にセッションアウトしてログインし直しになり、入力済みのデータが消滅することもあるので気を付けて欲しい。

まずは、メニューから「UPS」の「設定」を選んでシステム時刻の設定をする。手元の装置は初期状態でまる一日近く日時が遅れていたので、「ローカルコンピュータの時刻を適用する」を選んで適用ボタンをクリックすることで、即刻時刻合わせをしておいた。普通は「NTPサーバーとの同期」を選んでサーバーアドレスや更新感覚を設定してから適用ボタンをクリックしておけば以降は自動的に時刻合わせが実行される。
次に、前述していたNo.3とNo.4のコンセントをバッテリーバックアップ対象とするか否かの設定は、メニューから「コンセント」の「設定」を選ぶと設定用画面が表示される。ここでは、各コンセントが供給している電力も表示されるので、バッテリー供給時の負荷を予測することができる。
他に、電子メールでの通知を利用する場合はメニューから「診断」の「通知」の「電子メール設定」で、メールの宛先と送信サーバの設定ができる。なお、メールの言語として「English」と「日本語」が選べるが、残念ながら本文は問題ないものの日本語のメールSubjectは文字化けしてしまう場合があるので、「English」を選んでおくと無難なようだ。メールの送信内容は「診断」「通知」「通知設定」で設定できる。メールの設定が終わったら、「診断」「テスト」「電子メール」で適用ボタンをクリックすると即時にテスト用メールの送信ができる。ここで、受信用アドレスにメールが届いているか確認しておこう。

他にもバックアップの時間設定など、細かい設定が用意されているが、標準的には上記の設定をしておけば問題は無さそうだ。

従来のUPSは少なくともSOHOとかでサーバーでも設置しているような環境でないと大げさに思えたものだが、一般的なテレビレコーダーより若干小さめで、ブラックカラーで統一されたボディは、個人のパソコン周りに置いても違和感の無い機器として受け入れ易い製品だと感じられる。初期設定の手軽さから言っても、導入する際のハードルはかなり低くなったと評価して良さそうである。

2014-04-04

Nikon「COOLPIX P340」

今回はNikon製のコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX P340」を購入したので感じた点等をレビュー風に書いてみる。
これまで筆者が使用していた機種が「COOLPIX P300」で、シリーズで言うと初代の「P300」から「P310」「P330」「P340」と4世代を経ており、オリジナルモデルとは同じようでいて色々と細かい点が異なっている。個人的には、P300に比べてP330やP340は撮像素子が1/2.3型から1/1.7型へと大型化したことと、RAWデータの保存が可能になったことが買替えの大きな要因となっている。とは言え、多くの人の興味は、前世代の「P330」からの相違点だと思うので、その部分を中心に扱うつもりである。

まずカタログでも分かる主要スペックについては、35mm判換算24-100mm相当のF1.8-5.6の5倍ズームレンズ、有効1,219万画素の1/1.7型裏面照射型CMOSセンサー、外形寸法は約103.0×58.3×32.0mm、と「COOLPIX P330」と同様で、異なるのはGPSレシーバーが省かれて、代わりにWi-Fi親局機能を内蔵している。P330ではWi-Fiをアダプター装着によって実現していたので、手軽に利用できるようになったと言える。なお、Wi-Fi機能を搭載したモデルは多いが、P340のようにIEEE 802.11b/gにしか対応していないのは珍しい。少なくともIEEE 802.11nは使えないと通信速度上で不利になると心配しているが、もしかすると他に性能上のボトルネックがあるのだろうか。重さについては、約200gから約194gへと少々だが軽くなっている。ちなみに、ISO感度は従来の範囲に加えてISO 25600相当も利用できるが、これは高感度モノクロエフェクト専用となっている。また、主な追加機能としてレンズ周りのリング部分で手動回転による各種調節を可能としたことで、他社からも続々とリリースされているハイスペックコンパクトモデルに追従したものとみられる。

ボディの外観にしても、サイズが同等で、機能的にも差が小さいことからP330との差はごく僅かである。目立つ部分では、レンズ周りのリングが斜めに面取りされていたP330に比べて、コントロール用に指掛かりが良くなるように側面の幅を確保するために面取りをごく小さい範囲としている。また、目立たないがボディ前面の右手の指で掴むグリップ用の突起が、比較的丸みを帯びていたP330に比べて、より鋭角に尖った感じで断面が三角形に近くになっている。他に、撮影モードを切り換えるボディ上部のモードダイヤルでは、P330がシーンモードの中から「夜景」だけが独立していたが、P340では夜景がシーンモードの中に取り込まれており代わりに「スペシャルエフェクト」がダイヤル上で直接選べるようになっている。個人的には、あまりエフェクト撮影を使うことがないので、夜景の方が良かったかもしれない。
さらに、ボディにプリントされているアイコン類では、GPSマークからWi-Fiマークに変更されているぐらいの違いである。

新たに追加されたコントロールリングの機能は、標準だとメニューを呼び出して使いたい機能を選ぶタイプで、通常は前回選んだ機能が次回に優先して機能するが、個別の機能を固定的に優先するように割り当てることもできる。ただし、選べる機能は露出、感度、ホワイトバランス、フォーカス、ズーム、シャッタースピード、絞りの各調整と実に多彩に渡っており、活用するには意識的な使いこなしが必要となりそうである。

各種機能の中で意外だったのは、プログラムモードやマニュアルモード等で使用する「AFエリア選択」の中から「オート(9点)」が無くなっていることである。P340の場合は初期設定で「ターゲットファインドAF」が選ばれており、使ってみた感じでは、このAFでも比較的高速に合焦するので、他社の高速な機種には及ばないものの比較的スムーズに撮影ができる印象がある。ただし、この設定では距離が近いとみなした被写体に優先的にピントを合わせるようになっているので、シチュエーションによっては意図しないエリアを抽出することになりそうだ。
一方、マニュアルフォーカスを利用する場合にフォーカスの合焦範囲を表示・調節する「ピーキング」機能が新たに加わっている。ピーキングのレベルを調節することで、コントラストが強過ぎたり弱過ぎたりする被写体にも対応し易くなる。
さらに、新たに「多重露出」機能も加えられているが、RAWデータを保存する場合には利用できない。

初代P300から比べると追加されている機能は数多くあるのだが、ここは使い勝手の上での利点に絞って補足しておくことにする。
このシリーズは、バッテリーの充電に専用のチャージャを使わずにカメラ本体に装着した状態でmicroUSB端子を通じて充電することができるようになっている。この端子が、P300ではボディの底にあるバッテリー用フタの脇にあったのだが、P340ではボディ右側面上部にHDMI端子と並んで位置している。このため、ボディ底の三脚取付けネジを利用して装着する専用ケースを外すことなく充電ができるようになった。
また、P300ではストラップの取付け用の穴がボディ左側面中央に一個所だけとなっていた。このため、メーカー純正の専用ケースではストラップを両吊りとするためにボディではなくケースの方に取り付ける仕組みになっている。それに対して、P340では(P330も同様)ストラップの取付け用の穴がボディ両側面上方に用意されているので、専用ケースに付属しているストラップも直接ボディに取り付けるようになった。